ビジャレアルユベントスにチアゴリケルメのトレードを提案?

 スペインのスポーツ紙『マルカ』によれば、ビジャレアルユベントスのチアゴを獲得したいと考えているもよう。今シーズン、リヨンからユベントスに移籍してきたチアゴだが(同クラブにとっては今季最も高額な補強)、1月にはリーガ・エスパニョーラで現在2位と好調のビジャレアルへ行くことになるかもしれない。

 チアゴユベントスのプレーにうまくなじむことができておらず、シーズン序盤でレギュラーポジションを失ってしまった。数日前には「今後もベンチで過ごし続けるようであれば、冬の移籍期間にチームを離れたい」と発言。これを聞いたスポーツ・ディレクターのセッコは激怒し、クラウディオ・ラニエリ監督も深く失望したとされる。ラニエリは、イングランド・プレミアリーグチェルシーでもチアゴと一緒に仕事をしたことがあり、ユベントスがチアゴを獲得したのはラニエリの強い希望によるものだった。

 同じく『マルカ』紙によれば、ビジャレアルの首脳陣はユベントスに対して、チアゴリケルメの等価トレードの提案を考えているようだ。アルゼンチンのMFリケルメは、代表チームでは主役として活躍を続けているものの、ビジャレアルのチリ人監督マヌエル・ペジェグリーニにとっては頭痛の種となっており、リケルメ自身もこの移籍に同意しているらしい。リケルメは昨シーズン、期限付き移籍先のボカ・ジュニアーズで中心選手としてリベルタドーレス杯優勝を果たし、今年の夏にビジャレアルに戻ってきた。かのディエゴ・アルマンドマラドーナも、リケルメにイタリアでのプレーを勧めたようだ。

(C)SPORT

[ スポーツナビ 2007年10月23日 12:09 ]



中田徹 スポーツナビ

不振にあえぐ“優勝候補”AZ(1/2)
中田徹の「オランダ通信」

2007年10月16日
■シーズン開幕前の優勝候補筆頭

今季AZに新加入したFWペッレだが、期待に添うような活躍はいまだ見せられず 今季AZに新加入したFWペッレだが、期待に添うような活躍はいまだ見せられず【 (C)Getty Images/AFLO 】
 2006−07シーズン、4月29日に行われたオランダリーグの最終日は、PSV、アヤックス、AZが激しい優勝争いを繰り広げ、PSVがゴールの数わずかひとつの差でアヤックスを上回り、優勝を果たした。この日、3チームがオランダ各地で繰り広げた大熱戦をサッカーファンは堪能、「サッカーを愛する者がすべて“勝者”」と言われた。しかしあと一歩のところで優勝を逃した当事者、アヤックスとAZの関係者にとっては失望の日。エクセルシオールに勝てば自力優勝を決めることができたAZの監督、ファン・ハールは試合後こう語った。
「私はこれまで王手をかけた優勝を逃したことはないから、ショックはある。しかし、うちの多くの選手はこれまで優勝争いそのものをしたことがないから、もっと大きなショックを受けるはず。しかもそのショックは後からさらに大きくなる」

 FWイェナーは夏の準備期間に「監督の言うとおりだった。悔しさは後からさらに増してきた」と漏らした。こんな悔しさは二度としたくない――そんな思いがAZを支配した。昨季開幕前の親善試合でアーセナルに0−3と完敗したAZだったが、今季はインテルに4−2と快勝してシーズンインした。
 今季のAZは強い。昨季からメンバーがほとんど変わっておらず、若い選手は経験を積んで成長するだけ。デンベレ、アリ、クーフェルマンス、ペッレとレベルの高いFWが4人もいて2トップを何セットも組める――。そう各チームはAZを警戒し、今季の優勝候補筆頭に推す声が多かった。

 しかし今、AZは不振にあえいでいる。フィテッセアヤックスヘラクレスに敗れ、はや3敗。KNVB(オランダサッカー協会カップでも初戦で2部のカンブールに0−1で敗れた。

■メンタルゲームでの敗戦

 10月7日のフローニンゲン戦はホームゲームということもあり、AZは負の連鎖を断ち切りたいところ。AZはこれまでの4−4−2を4−5−1に切り替え、中盤を厚くして戦った。“サーキュレーション(循環)フットボール”と呼ばれるAZのパス回しは実に見事で芸術度も高く、次々にチャンスを作った。
 31分、AZに待望の先制点が生まれた。パスを出せる近未来的GKワーターマンがロングパスをフローニンゲンのDF裏を狙って蹴った。すばしっこいアリが最前線でこのボールを相手DFと競り合い勝ちし、飛び出してきたGKの頭上をひざに当てるロビングシュートで技ありのゴールを決めた。この瞬間、アリとワーターマンに選手が駆け寄り、AZに喜びの輪が2つできた。AZらしい、格好いいゴールだった。

 しかしAZは前半飛ばし過ぎていた。けがが治りきらないアリは前半いっぱいでお役御免で、後半からペッレが1トップのポジションを務めたが、チーム全体の動きが鈍っておりペッレは前線で孤立した。試合の流れはフローニンゲンのものとなり、71分に1−1となった。
 どうしても勝ちたいAZは終盤戦にもうひと頑張りし、アリのヘッドがバーに当たったこぼれ球をデ・ゼーウが押し込んで、83分に2−1にした。さすがにこれでAZの勝利は固いと思われたが、ロスタイム3分にフローニンゲンがまさかの同点ゴールを決めて2−2で試合は終わった。スベイデクのシュートに対し、AZは4人の選手がいっせいにスライディングタックルを仕掛けたが、それでもシュートはわずかなすき間を抜けてゴールイン。ツイていないときはこんなもの。タイムアップの笛と同時にAZの選手はピッチの上に崩れ落ち、そんな彼らに観客から容赦ないブーイングが飛ばされた。AZのサポーターにとっては珍しく、不調のチームに不満の態度を表した。それでもファン・ハール監督はうつむぎながら引き上げる選手に向かって1人1人ねぎらいの握手をしたり、肩に手を回したりした。勝っても試合内容が悪ければ選手との握手を拒むファン・ハールが、である。

「後半に入ってAZはメンタルが崩れた」とフローニンゲンのヤンス監督、そしてレフチェンコ主将。しかしファン・ハール監督は、「いや、うちの選手のメンタルはたいしたもの。だからこそ後半の勝ち越しゴールが生まれた」と反論した。正解はどちらであれ、実際はフローニンゲンがピッチの上でも、ベンチの中でも、「AZは弱っているぞ。うちはいけるぞ」と手応えを感じながら戦っていた。やはりAZはメンタルゲームで負けていたのが正解だろう。

 この引き分けで“優勝候補”AZは7節を終えた時点で12位というまさかのポジションにいる。AZは今季の目標を「何でもいいからタイトル。KNVBカップだってタイトルだ。オランダリーグにだけこだわるということはない」(スヘリンハ会長)と掲げていたが、すでにKNVBカップは早期敗退してしまい、オランダリーグも序盤でつまずいてしまった。

<続く>


不振にあえぐ“優勝候補”AZ(2/2)
中田徹の「オランダ通信」

2007年10月16日
■不振の根本的な原因は?

オランダ代表でもレギュラーに定着しつつあるデ・ゼーウ(右)。AZの不振を払しょくするにはまずこの男のブレークからか オランダ代表でもレギュラーに定着しつつあるデ・ゼーウ(右)。AZの不振を払しょくするにはまずこの男のブレークからか【 (C)Getty Images/AFLO 】
 テレビ解説者のファン・ハルストはフローニンゲン戦のAZを見て、「前半のAZを見ろ。彼らの復活は近い」と予言したが、果たしてどうだろう。
 僕は、前半のAZを見て、「飛ばしすぎ」と思った。この試合は絶対勝ちたい。そのためにも序盤からガンガン攻めて、相手に付け入るすきを与えたくない。そんな意識が前半の飛ばしすぎを生み、後半ピタリと足が止まるのは、実力がありながら勝てないチームが陥る典型的な勝ち点取りこぼしパターンである。サッカーはあくまで90分間トータルでコーディネートするもの。AZの前半が素晴らしかったことは同意だが、それでも今のAZは重症だと思う。

 フローニンゲン戦後、サッカー界はインターナショナルマッチウイークに入ったため、しばらくオランダリーグはお休み。AZの次の試合は10月21日、ヘーレンフェーンと再びホームで戦う。この試合でまたAZは前半から猛攻を仕掛けるだろう。このとき効率よく前半のうちに2〜3点奪って勝利を決定付ければ問題ないのだが、フローニンゲン戦のようにチャンスを逃し続けるとヘーレンフェーンはもっと危険だ。前半最前線でストライカーのアウベスがまったく動かず体力を温存し、後半疲れが見えたAZを相手にゴールを量産――というシナリオは十分考えられる。

 これまで散々語られているが、AZの不振の原因はストライカーの得点力不足だ。開幕前にアルベラッツェ(現レバンテ)が、開幕後にクーフェルマンス(現PSV)がチームを去り、昨季2人が挙げた36ゴールを誰かが埋め合わせしないといけなくなった。しかしフローニンゲン戦の前半で12本のシュートのうち1本しか決まらなかったことに象徴されるように、ゴールゲッターとして期待されて入団したアリ、ペッレが不発のままである。
 しかしストライカーにゴール不足の責があるにしても、AZの試合展開を見るとMFだってもっとゴールを決めていてもいいはずだ。個人的には今季のAZの不振の根本的原因は、各選手が本当の意味でブレークを果たしていないことに尽きると思う。

 DFのドンク、MFのマルテンス、FWデンベレらの成長が今季は今ひとつで、大げさな表現を使えば2歩後退している。だが、それは若手が成長するための当然のプロセスだ。この3人は後で3歩進んで、シーズン終盤事までに帳尻を合わせトータルで1歩前進していればいいのだが、チームとしてはそうはいかない。不振の選手をカモフラージュするような起爆剤的選手が必要だ。
 しかし残念ながらブレークを果たしきっていないAZの選手は、いくら高い素質を誇り、試合の中ではいいプレーを見せていても、それを結果として残す方法を知らない。ゴール不足のアリもこのカテゴリーの選手で、シュート以外のプレーは実に見事なもので、AZファンのお気に入り的存在である。ちょっとコツさえつかめばゴールを量産しそうな雰囲気を持っている。そして何か重要なゴールをきっかけにブレーク街道をまっしぐらと行きたい。

 AZでブレークが必要なのはほかの選手も一緒。ブレーク集団こそが、タイトル奪取のチームなのだ。中でもMFのデ・ゼーウには注目だ。いつの間にかデ・ゼーウはオランダ代表のレギュラーとして定着しつつあり、うまくいけばオランダ代表で先にブレークし、それをクラブに持ち帰るのだってあり得るだろう。

<この項、了>