就任

オシム氏:日本代表の新監督に正式決定 日本サッカー協会

会見後におどけながら握手するサッカー日本代表オシム監督(右)とU21同代表の反町監督(左)、日本サッカー協会の川淵会長=東京都内のホテルで月21日午後5時54分、森田剛史写す 日本サッカー協会は21日開いた理事会で、日本代表の新監督にJ1千葉前監督のイビチャ・オシム氏(65)を正式決定した。東京都内のホテルで行われた調印式後の会見でオシム監督は「初心に帰り、先のことを考える必要がある。誰かのまねをするのではなく、日本選手の持ち味である敏しょう性や高い技術をさらに伸ばしたい」と抱負を語った。外国人監督が日本代表の指揮を執るのはトルシエジーコに続いて3人連続5人目。オシム監督の初戦は8月9日に東京・国立競技場で行われるトリニダード・トバゴとの国際親善試合となる。また、08年北京五輪出場を目指すU21(21歳以下)代表監督にはJ1新潟前監督の反町康治氏(42)の就任を承認した。

 ▽川淵三郎・日本協会会長 千葉サポーターの皆さんには納得の行かない面もあるかもしれないが、オシム監督を日本代表に送り出して本当に良かったと思える日が早く来ることは間違いないと思う。反町監督とのコンビで今後4年間、日本サッカー界を引っ張っていってくれることを心から期待している。

 ◇反町氏は日本代表コーチも兼任

 U21日本代表監督に正式決定した反町氏は、日本代表コーチも兼任する。調印式を終えた反町監督は「責任の重さを感じている。若い世代が日本サッカーを支えるという意味でも、U21世代が重要になる。この仕事は選手のセレクト(選択)が大事。いい食材を選び、オシムさんのスパイスをあてながら、おいしい料理を作りたい」と意気込みを語った。

 選手選考の基準については「心技体に戦術(理解)を加えた4つ」と強調したうえで「水曜(19日)のJリーグに先発メンバーとして出場したU21世代は全体の7%ぐらい。その率が上がれば、選手選考は簡単になる。ぎりぎりの戦いの中でこそ力は伸びるし、各クラブにも(積極的な若手起用を)依頼していきたい」と語った。

 また、U21代表コーチには、元日本代表DFの井原正巳氏(38)、02年W杯で日本代表GKコーチを務めた川俣則幸氏(39)らが就任する。【安間徹】

 ◇オシム新監督との主な一問一答は以下の通り。

 −−日本代表監督を務める感想は。

 日本サッカー協会の信頼を受け、うれしく思う。最初の試みとして、現在の代表チームを「日本化」させることが必要だ。初心に帰ることで、日本選手が本来持つ特質を出せる。日本らしいサッカーをしようということ。サッカーは、一層スピードに乗った競技になる。常に進化するサッカーに、こちらが追いつかなければならない。

 −−W杯ドイツ大会での日本代表に対し、失望があった。

 こちらから聞きたいのは「失望」ということは、その前に楽観し過ぎたのではないかということ。楽観視はどんな根拠に基づいたのか。私がこう言うと、皆さんがっかりするかもしれないが、現実を見る必要がある。自分たちの能力以上のものを期待すると、失望することになる。日韓大会とドイツ大会を成績で比較しない方がいい。02年はホームで戦った。今回のジーコ監督は準備などの面で、より難しい状況に直面した。がっかりするような成績ではない。

 −−日本らしいサッカーとは。

 日本が近い将来、長身の選手を見つけるのは難しい。いたとしても、彼が日本人の特質を生かしたサッカーをするとは限らない。私が考えるのは、日本人の持ち味をいかに生かすか。他国にないようなものを日本人は持っている。具体的に言えば敏しょう性、いい意味でのアグレッシブさ。個人の技術……、今は個人技がチームのためになっていない気がするが。走りや展開のスピード。これまでの日本代表はスピードのあるチームではなかった。もっとスピードに乗ったプレーができる。どこかのスタイルをまねたりはしない方がいい。

 ◇オシム新監督とは

 オシム新監督は、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身で90年ワールドカップ(W杯)イタリア大会では旧ユーゴスラビアを率いてベスト8の実績を残した。03年に千葉監督に就任してからチームを上位争いの常連に引き上げ、昨年のJリーグナビスコ杯で優勝。千葉に93年のJリーグ開幕後の初タイトルをもたらした。若手育成にも定評がある。

 契約は1年ごとの更新となるが、2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会を見据えて4年間指揮を託す予定。スタッフの顔ぶれも決まり、U21代表監督と兼務する形で反町氏とJ1FC東京元監督の大熊清氏(42)がコーチに就任。GKコーチにはU19日本代表コーチの加藤好男氏(48)が昇格した。

 当面のチーム作りの方針についてオシム監督は「代表には時間が必要。時間がない中で新しいことをやらない方がいい」と語り、デビュー戦となるトリニダード・トバゴ戦ではW杯ドイツ大会のメンバーを中心に選考する考えを示唆した。トリニダード・トバゴ戦には海外クラブ所属選手、同時期に開催されるA3チャンピオンズカップに出場する千葉、ガ大阪の選手は招集しない見通しだ。

 オシム監督は現在の日本代表の欠点について「個々の技術は高いが、それがまだチームのために働いていない。もっとスピードを持ったプレーができるはず」と強調。強化の長期的展望においては、反町コーチと二人三脚で、才能ある若い世代を積極的に登用する考えも示した。

 会見では、巧みな比ゆと独特な言い回しを用いた「オシム節」を随所に披露。W杯ドイツ大会1次リーグで1分け2敗に終わった結果について失望が広がっているとの問いには、「正しい情報を持っていなかったか、持っていても相手を見下していたかのどちらかだ」に答え、笑いを誘う場面もあった。【仁瓶和弥、小坂大】

 【略歴】イビチャ・オシム 1941年サラエボ出身。旧ユーゴスラビア代表時代は攻撃的MFとして活躍。64年東京五輪の日本戦では2得点を挙げた。86年から旧ユーゴの監督に就任し90年W杯イタリア大会ベスト8。94年からオーストリア1部リーグのシュトルム・グラーツで指揮を執り、欧州チャンピオンズリーグ出場。03年、J1千葉(当時は市原)監督に就任した。191センチ、90キロ。

 【略歴】反町康治(そりまち・やすはる) 1964年浦和市(現さいたま市)出身。静岡・清水東高−慶大を経て88年から旧日本リーグ全日空でMFとしてプレー。同社を母体としたJリーグ・横浜フリューゲルス(現横浜マ)、平塚(現J2湘南)でプレーし、通算108試合出場で9得点。引退後はバルセロナ(スペイン)でコーチ修業し、01年にJ2新潟監督に就任。03年にJ2を制してJ1昇格を果たすなど、昨年まで5年間率いた。173センチ、64キロ。