オシム好み 今野は「水を運ぶ人」
ミニゲームで積極的なプレーを見せる今野。オシムジャパンの「水を運ぶ人」の適任者だ


 J1は19日、各地で9試合を行い、W杯中断を経て約2カ月半ぶりに本格的に再開する。次期日本代表監督に内定したイビチャ・オシム氏(65)率いる新生日本代表の初陣となる8月9日のトリニダード・トバゴ戦(国立)まで4節。混戦模様の優勝争いとともに、オシムジャパンへのアピール合戦も激化しそうだ。オシム氏がサッカーに必要な選手と説く「水を運ぶ役割の選手」。その代名詞となり得るのが、FC東京のMF今野泰幸(23)だ。

 今野がオシムイズムを体現する。豊富な運動量と献身的な守備。今野のプレースタイルはオシム氏の言う「水を運ぶ選手」と見事に合致する。

 アウエーで福岡と対戦するFC東京は中断前の4―4―2から今野を1ボランチに置いた攻撃的な3―5―2に変更。「スペースが上下左右にあるけど、そこが一番大事なところ。大変だけど、機能すればチャンスも増えるし点も取れる」。石川、馬場の2トップに梶山、ルーカスが攻撃的MFに入る新布陣で水を運べるのは今野だけとなった。広大なスペースを1人でカバーする今野の負担は増すが、だからこそ、、持ち味をアピールする絶好の機会にもなる。

 オシム氏はW杯開幕前、攻撃的な選手ばかりがそろった日本代表の中盤に警鐘を鳴らした。

 「サッカーにはバランスを保つために水を運ぶ選手が必要。福西1人で水を運べるのか。中村、中田、小野はクラブで“1人”の存在であり、残り10人が守備を補っている部分もある。そういう選手が1つに集まってチームが成り立つのか」

 不安は的中した。オーストラリア戦は1―0リードの後半34分に柳沢を小野に交代。中盤の人数は増えたが、攻守のバランスは崩れ、痛恨の逆転負けを喫した。もしも今野のような選手が投入されていれば…。結果論だが、オシム氏の“予言”は実に的を射ていた。

 03年世界ユース、04年アテネ五輪と年代別代表の主力を担った今野は、ジーコ前代表監督時代にA代表デビューも果たしたが、メンバー定着には至らなかった。テレビで観戦したW杯では「世界と差があった」と冷静に日本の戦いを見守った。「4年後への思い?みんなあると思うけど、先のことは考えていない。1日1日、チームのことを考えるだけ」。無欲にチームプレーに徹する姿勢もまた“オシム好み”だ。

 ≪阿部DFで先発≫千葉・阿部が最終ラインから水を運ぶ。オシムイズムの申し子、千葉の阿部は19日のG大阪戦にボランチではなく、3バックの一角で先発する。「あとはもうやるだけ。バランスがすごく大事になる試合だと思うし、後ろからよくバランスを見たい」。佐藤のワンボランチという攻撃的布陣だが、左サイドの坂本やトップ下の羽生ら中盤には献身的な選手が並ぶ。さらにDFラインに阿部も控えることでバランスは保たれている。

 ≪家長は冷静「選ばれたら考える」≫G大阪・MF家長は「しっかりいいコンディションで臨めるようにしたい」と意欲を見せた。一足早く12日の磐田戦で再開戦を戦ったが、そこでは、U―21代表監督就任が内定している反町氏の前で1アシスト。それでも「勝てなかったので、いいイメージはない。周りが騒いでいるけど(代表は)選ばれてから考えたらいい」と過熱気味の周囲をよそに、冷静だった。

 ≪中村「本買いたい」≫川崎FのMF中村は日本代表入りを熱望した。チームでは守備的MFながら3得点している攻守の要。独特のリズムと広い視野から繰り出すパスセンスが光る。J2東京Vのラモス監督が「ぜひうちに欲しい」と話した逸材で、クラブ側も「日本代表に一番近い」と期待。「考えながら走るオシムのサッカーが好き」という中村は「(オシム監督の本(「オシムの言葉」)を買おうと思ったが、書店に置いていなかった。実際に教えを受けたい」と話した。
[ 2006年07月19日付 紙面記事 ]


移籍騒動から一転、今野を主軸に据えることがほぼ決定的みたいですね。であるならば、伊野波は左サイドにコンバートすれば両者の並存は可能…伊野波もとにかくレギュラーとして使うことが重要なのではないかと



オシム氏再生工場「古い井戸に水が残っている」
会談後、川淵キャプテン(右)と固い握手をかわすオシム
 

オシム・ジャパンはベテランにもチャンスあり―。次期日本代表監督に内定している前千葉監督のイビチャ・オシム氏(65)と、日本サッカー協会川淵三郎キャプテン(69)が18日、千葉・浦安市内のホテルで初会談を行い、21日に正式契約することを改めて確認した。名将は「古い井戸には水がまだ残っている」と得意のオシム語録を披露し、ベテラン選手の招集を示唆。さらに秋開幕へのシーズン制移行など、日本サッカー界発展に強い意欲を見せた。

 日本代表監督として初の“オシム語録”が飛び出した。

 「日本は古い井戸にも、少し水が残っています。それなのに、すぐに新しい井戸を掘るのでしょうか。古い井戸の水はまだ使えるのです」

 オシム氏と川淵キャプテンの初会談は、予定より2倍以上長い1時間10分に及んだ。冒頭、川淵キャプテンが6月24日のドイツW杯帰国会見で、次期監督として名前を漏らしたことを謝罪。オシム氏は「全く問題ない」と答え、21日に正式契約することが確認された。話は一気に弾み、指揮官は新生・日本代表の選考の考え方を伝えた。

 会談後、オシム氏は報道陣には無言で帰宅。代わって会見した川淵キャプテンも「古い井戸」の固有名詞を挙げることはなかったが、ベテラン選手にも十分にチャンスがあることだけは確かだ。

 「走るサッカー」を旗印とするオシム氏は、若手を積極的に登用すると見られていたが、新指揮官の考えはさらに深いようだ。オシム・ジャパンは、2010年南アフリカW杯に向けて、トリニダード・トバゴ(9日、東京・国立競技場)戦でスタートする。06年ドイツ組には全員チャンスがある。02年日韓組のFW西沢明訓(C大阪)、またW杯未経験のFW久保竜彦(横浜M)が招集される可能性は十分。さらにはFW三浦知良(横浜C)、FW中山雅史(磐田)という“古い井戸”も決してかれてはいない。

 川淵キャプテンは詳しい内容を明かすことを避けたが、オシム氏はドイツW杯での日本の戦いぶりにも厳しく言及。日本サッカー発展に意欲を見せる名将によって、古い井戸から新しい水がわき出ることも期待できる。同時に新しい井戸の発掘にも余念はないはず。オシム・ジャパンには、日本全国、世界各国から“うまい水”が集まる。

(2006年7月19日06時02分 スポーツ報知)