オシム語録炸裂!

チームとして機能することが大切!オシム氏、指導方針激白!
グラーツ空港で子供たちにサインするオシム監督。郷土の英雄は、日本の英雄になる(撮影・森本幸一)
グラーツオーストリア)28日=須田雅弘、円賀貴子通信員】日本代表監督を退任したジーコ氏(53)の後任として日本協会から就任要請を受けているJ1千葉監督のイビチャ・オシム氏(65)が、サンケイスポーツに日本代表の現状や今後の展望、就任後の指導方針などについて激白した。代表監督就任決定を前に、オシム氏のやる気が伝わる問答となった。



 −−27日に会った田嶋氏とは、どういう構想を話したのか

「若いだけではダメ。クオリティーがついてこないと。“オレたちは若いからそれだけでチャンスがある”と思われては困る。そんな話をした。日本には高い目標がある。ただ私が懸念するのは、サッカーが発展しているのは日本だけではないことを、日本が忘れがちなことだ。例えば今回のW杯での豪州。今や日本や韓国だけではない。アラブ諸国北朝鮮、インド、ミャンマーベトナム…と、どんな発展を遂げるか分からない。どこのサッカーが一番いいか、どこが最も美しいサッカーか−という話はよくする。しかしもっと現実を見ないと」

 −−試合会場で日本対クロアチア戦を見たが

「35度以上。あの暑さでは走れないしアイデアも出ない。あれはサッカーというより生き残り。だからクオリティーの話はできない。選手を批判する人は、自分たちもあの中で走ってみなさい。日本は初戦で豪州に負けたのが決定的。負け方が“バカ”とは言わないが、理性的でなかった。ホーム開催の02年に比べ、リュックサックのように肩に重みがあった。1次リーグ突破ではだれも満足しなかっただろう。期待が選手の心理に問題を与えた。ジーコが選んだメンバーはベストだったと思う。久保、鈴木、松井らが選ばれなかったが。全員を連れてはいけない」

 −−今の中心選手が次のW杯では32−33歳になる

「どの世代にも終わりはくるが、だれもが同じ終末を迎えるとはかぎらない。すでに終わった人もいれば、まだ何年も活躍できる人もいる。若いだけでもダメ、経験だけでもダメ。チームとして機能することが大切」

 −−千葉と同じ厳しいトレーニングを代表でも課すのか

「代表では機会がない。一緒にいる期間が短い。ただ練習は問題を解決する意味で重要。ピッチで説明しないと分からないものも多い」

 −−契約は2年か

「自分と協会の両者に選択肢があった方がいい。4年やる−といってサインするのは簡単だが協会が途中で“違う。合わない”と思えば選択肢があった方がいい。協会に対してフェアでありたい。2年あれば見極めるのには十分だろう」

 −−五輪代表の指導もするのか

「問題ない。私が与えるだけでなく、お互いに経験を交換したい。日本人は私より情報に通じているし、私には違う経験がある。“1人の男と1頭のロバの方が1人の男よりいい”と私の国ボスニアではいう。2人の方が1人よりも絶対に賢いという意味だ」

 −−中田英ら今の代表の中心選手は、これからも同じ役割を果たすか

「なぜ中心にならないことがあるのか。ただ、彼らが常にプレーできていればだ。欧州でやっている選手の多くが、プレーできていない。ルマンの松井を例外に」

 −−外国へ行けとJの選手へすすめるか

「機会があれば−と常に言っているが、レギュラーとしてプレーできるチームでなければ。大久保はマジョルカで2年で2、3試合いい試合をしただけで終わった。非常に才能があるのに。スペインでレギュラーになるのが難しいのは分かる。だがいったい何が大切か。お金? 経験? プレースタイル? 他をマネする必要はない」

 −−日本での幸運をお祈りします

「幸運は待っているだけでは危険だよ」


★田嶋委員長は安堵
日本代表監督就任要請のため、27日(日本時間28日)にオシム氏の自宅を訪問した日本協会・田嶋技術委員長は28日、滞在先のフランクフルトで「オシムさんがクロアチア語で受けたインタビューでは、かなり(就任へ)前向きなことをいわれていたと聞いた」と笑顔。就任拒否となれば監督選びを再考しなくてはならないだけに、とりあえず胸をなで下ろしていた。



★巻も意欲
オシム氏の教え子でもある千葉の日本代表FW巻は「素晴らしい監督。当然、ジェフにいてもらいたい気持ちもあるが、日本のサッカー全体を考えるといいことですし…」と話した。オシム・ジャパン誕生の際はエース候補の1人で「そういう中でやってみたいというのもある」と代表での“師弟タッグ”にも意欲をみせた。