この人は代表入りは?

松井のゴールで“打倒リヨン”に成功 ル・マンが準決勝進出
スポーツナビ - 2008/1/17 11:47
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 松井大輔の所属するル・マンは、16日のリーグカップ準々決勝でフランス王者のリヨンを1−0で下し、下馬評を覆す大殊勲を挙げた。決勝点を挙げたのは、ほかでもない松井だ。28分、地元記者に『個人的偉業』とたたえられた松井の見事なミドルシュートで先制点を奪ったル・マンは、猛攻に遭いながらも果敢に守りきり、勝利をもぎ取った。

 15日の強風のため、急きょ16日に延期になったこの対戦。試合前の予想で、リヨンの圧勝を疑ったメディアはいなかった。というのもル・マンは、これまでリヨンに7戦7敗で、昨年も準決勝でこのリヨンに対し頭を垂れていたのだ。またリヨンがベンゼマの爆発で乗りに乗っていることに加え、ル・マン側はアフリカン・ネーションズ・カップで主力のロマリック、ジョルビーニョ、カマラ、セセニョンを欠き、さらにディフェンスのかなめバシャまでを故障で失って、大きく戦力を落としたと見られていたのである。

 ル・マンの背骨といわれるデメロ−ロマリック−バシャ−プレの半分を起用できないル・マンは、当然ながらシステムの調整を強いられたが、リヨンはベンゼマジュニーニョら、ほぼベスト・メンバーをそろえていた。リヨンは今季、リーグ連覇に加え国内カップ優勝を大きな目標に挙げており、例年になくリーグカップに意欲を燃やしていたのである。
 一方、ル・マンのGKプレは故障で数試合をスキップした後に、この試合でやっと復帰したところだった。実際、このフランス有数のGKのひとり、プレのカムバックも、ル・マン勝利の大きな要因だった。プレは、少なくとも4度にわたり、リヨンの決定的チャンスを阻止したのだ。

 前半はリヨンが押し気味ながら、均衡した展開に。リヨンのペラン監督は、ベンゼマをトップに、バロシュレミーをサイドの攻撃手の役につけて臨み、これといった危険な場面を作れずにいたものの、試合をコントロールし続ける。一方のル・マンは、デメロをトップに据え、松井を通常の左ではなく右サイドに、左サイドには通常は松井の交代要員であるドゥイラーを入れた4−3−3を起用し、用心深く試合を始めた。フランス・カップで退場処分を受けたガルシア監督は、観客席からトランシーバーでベンチと連絡を取りつつ指揮を執った。

 10分にデメロにクロスを送り、チャンスを見ながら仕掛けていた松井が、勝負に出たのは28分だった。クタデールが長いリスタートのボールを送り、それを受けたドゥイラーが右サイドの松井にパス。松井はドリブルで軽くセンターに切り込むと、ペナルティーエリアの外、ゴールまで約25メートルの位置から、左足ですかさず強烈なミドルシュートを放った。ボールはゴール前でバウンドしてリヨンのGKクーペをあざむき、ゴールの左隅に。ゴール前にDFが数人いたため視野をさえぎられたか、出足の遅れたクーペに、これを阻むすべはなかった。松井は笑顔で手を上げてスタンドにあいさつしてから、三銃士風のうやうやしいお辞儀でファンの歓声に答えた。

 そしてここから、この日見事な活躍を見せたGKプレをリーダーに、ル・マンの果敢な守りが始まる。34分、プレはまずジュニーニョのFKをブロック。39分にはベンゼマがドリブルでDFを抜いてシュートを放つが、プレは完ぺきな読みで身を低くすると、ボールをがっちり止めた。41分にはジュニーニョの難しい軌道のCKが、アンダーソンの頭をかすめてゴールポストに当たるひやりとする場面もあった。

 後半に入ると当然ながらリヨンはより積極的に攻撃に出、プレッシャーをかけたが、ル・マンベンゼマに時には何重ものガードをつけ、懸命に守った。ル・マンはすきを見て攻撃にも出るが、松井へのマークがより厳しくなり、なかなか突破口を開けずにいた。62分にはジュニーニョペナルティーエリアの中にボールを送り、スキラッチがこれをヘッドで強打したが、プレはこれをはじき返す。85分のベンゼマのシュートもがっちりセーブしたプレは、その3分後、至近距離からのベンゼマのアクロバティックなオーバーヘッドシュートを、素早い反応で上にそらした。

 5分という長いロスタイムを守りきったル・マンは、終了のホイッスルを聞くや、肩を抱き合って勝利を祝った。ル・マンには、リーグのリヨン戦で2−0とリードを奪いながら、逆転された苦い経験がある。松井いわく「もう勝った」と思ってしまったために崩れた経験から学び、この日のル・マンは最後まで集中力を切らさず、ついに念願の“打倒リヨン”に成功した。「ついにリヨンに勝てた。ゴールもそうだけど、チームが勝てたことがすごくうれしい」と試合後喜びを隠さなかった松井は、自ら「1月はいつも調子がいい」と認める冬男。ちなみにル・マンがリヨンを破ったニュースは、英国『ガーディアン』紙など海外のメディアにも直ちに報じられ、中には「松井、リヨンを撃墜」とヘッドラインを打った媒体もあった。

 試合後、リヨンのぺラン監督は「前半、われわれはカップにふさわしいプレーをしていなかった。もしかすると自信を持ちすぎてしまったのかもしれないし、おごりがあったのかもしれない」と、無念さを吐露した。一方、ル・マンのガルシア監督は「試合前にも言ったが、リヨンに勝ったことは大きな殊勲。選手たちは一丸となり、模範的なプレーをした。王者を破るには、ル・マンは150%の力を出さねばならず、今夜はそんな試合になった。だが、リヨンはちょっぴり実力を下回るプレーをしたかもしれない。われわれは守るだけでなくチャンスを見て仕掛け、決して受け身ではなかった、勝利は、それをより強く望んだ者のもとに来たのだ。この勝利をじっくり味わいたい」と、満足感を口にした。

 リヨンの三冠の夢を砕き、準決勝に進出したル・マンは、次にリーグ2位のナンシーを3−0で倒したランスと対戦する。そのほかの試合ではパリ・サンジェルマン(バレンシエンヌに対し4−0)とオセールマルセイユに対し1−0)が準決勝行きの切符をつかんだ。
[ 2008/1/17 14:15 更新 ]
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