ガットゥーゾはボカサポーター!?

ガットゥーゾミランは自信を取り戻した」(1/2)
TOYOTA プレゼンツ FIFA クラブワールドカップ ジャパン 2007

2007年09月07日

ミランダイナモとして中盤を支えるガットゥーゾ。闘争心溢れるプレーでチームを鼓舞する【 (C)Getty Images/AFLO 】

 ミランで9シーズン目を迎えたジェンナーロ・ガットゥーゾは、“リンギオ”(犬のうなり声)というそのニックネームが語る通り、闘争心溢れるプレーで相手の攻撃の芽を摘む中盤のキープレーヤーである。テクニックに優れる選手が多いミランにあって、豊富な運動量と激しい当たり、そしてチームを鼓舞するリーダーシップは貴重な存在だ。

 昨シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(以下、CL)王者となり、12月には「TOYOTA プレゼンツ FIFA クラブワールドカップ ジャパン 2007」(以下、クラブW杯)に欧州代表として臨むミラン。南米代表は2003年のトヨタカップ(現クラブW杯)で敗れた相手、ボカ・ジュニアーズに決まり、両者が決勝に進めば4年前の再現となる。自らボカファンを公言するガットゥーゾだが、PK戦でボカに敗れた悔しさは忘れていない。

“ロッソ・ネロ”(ミランの愛称)の次期キャプテン候補とも言われるガットゥーゾがクラブW杯、そして宿敵ボカへの思いを語った。



■大陸王者が集うのは素晴らしいアイデア
――ガットゥーゾと言えば、何千もの戦いを経験してきたグラディエーター古代ローマの剣闘士)のようなイメージがあるよね

 確かにイメージはそうだろうな。フットボールを戦闘に例えるなら、おれはグラディエーターってところだろう。何かで読んだけれど、今やフットボールは「戦争の延長」なんて言う人もいるくらいだ。

――読書家なんだね。本の引用をする選手はそう多くはないよ

 自分のことを知的だとは思わないけれど、この世界に興味深いことはたくさんある。それが自分の好奇心を呼び覚ましてくれるんだ。

――では君のような“戦士”にとって、クラブW杯はどのくらい興味深い? 欧州出身ではない人間として聞くんだけれど、ヨーロッパのクラブはかつてのトヨタカップの時代から、クラブW杯よりCLを重要視しているよね

 それは事実だ。おれが子供のころ、ヨーロッパのクラブにとって一番重要だったのは、(CLの前身の)チャンピオンズカップで優勝することだった。でも、次第にトヨタカップも世界中で試合が見られるようになり、そうした欧州の考え方も変わってきたように思う。
 それに断言してもいいが、2003年のトヨタカップで日本に行ったとき、おれたちは何としても優勝しようと意気込んでいた。ライバルのボカ・ジュニアーズ――今回も彼らと当たる可能性が高いが――彼らのことも研究していたし、相手をリスペクトしていた。難しい試合になることは分かっていたし、お互いのことをよく知っている現在のフットボールでは、すべてが対等なんだ。

――確かにミランはあの年、トヨタカップを優先して、CLのグループリーグ最終節をサブメンバーで戦っている

 そうだ。あの時点でおれたちはトヨタカップに重きを置いていたし、この大会に参加できることを光栄に思っていた。日本に行くことの重要性を理解していたんだ。そして、今ではクラブW杯となり、各大陸のチャンピオンが集う大会となった。ミランにとって、さらに優勝する重要性が増したと言える。

――大陸王者がトーナメントを戦うというクラブW杯の方式についてはどう思う?

 素晴らしいアイデアだと思う。FIFA(国際サッカー連盟)が欧州と南米のチャンピオンが対決するだけでなく、すべての大陸王者が戦うことを受け入れたのは、とても民主的なことじゃないか。W杯だって、2010年は南アフリカ大会になり、すでに日本と韓国でも開催された。クラブW杯だって、世界中に門戸が開かれていて悪いわけがないだろう? 今の方式が一番公平だと思うし、おれは賛成だ。もう少し回を重ねれば、もっと完成形に近づいていくだろう。

<続く>



■リベンジを心から望んでいる
――ミランボカ・ジュニアーズは共に今大会の優勝候補であり、すなわち決勝で再び対戦する可能性が高い。ミランにとっては、4年前のリベンジを遂げるチャンスだ

 心からそれを望んでいる。前回はPK戦で優勝がこの手からすり抜けていったけれど、あれはイーブンの試合だった。
 リベンジと言えば、昨シーズンのCLではリバプール相手に2005年に敗れた雪辱を果たすことができた。クラブW杯でもボカにリベンジしたい。ボカは当時の選手はほとんど残っていないだろうけれど。(2003年にスタメンだった)カシーニはもうプレーしていないと聞いた。

――そう、彼は引退した。現在のボカは4年前よりも若い選手が多く、テクニックにも優れている。例えば、カナダで行われていたU−20W杯の優勝メンバーであるエベル・バネガとかね

 カシーニのことは特によく覚えているんだ。試合が始まってすぐ、彼はおれを見て言った。「気をつけろ! おれはここにいるからな」って。自分にそっくりだと思ったね(笑)。おれもカシーニをにらみ返したけれど、何も言わなかった。あのとき彼は、己のテリトリーを確保しようとしたんだと思う。
 バネガのプレーはよく見ていないけれど、みんなクラック(名手)だって言っている。近いうちに彼がイタリアに来る可能性もあるんじゃないか。

――その可能性もあるだろうね。ほかにボカで知っている選手はいる?

 おれがボカのファンだってことは、誰もが知っているよ(笑)。とはいえ、決勝で戦うことになればそんなことは関係ない。2003年に戦ったメンバーでは、バタグリアが今も残っていることは知っている。でも、ほとんどの選手は残っていないんじゃないか。アルゼンチンでは、実力のある選手はヨーロッパなどへ移籍したりして、入れ替わりが激しいからね。当時のメンバーで言えば、GKのアボンダンシエリは今はスペインにいるし、テベスマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。バロスケロット(コロンバス・クルー/米国)やスキアビ(ニューウェルズ・オールドボーイズ/アルゼンチン)も今はボカにいない。



■自分たちの力を信じるだけ
――その一方で、ミランはチームの核となる選手は顔ぶれが変わらないよね。ロナウドジラルディーノが加入して、むしろ4年前より強力になった感さえある。これは大きなアドバンテージだと思わないかい?

 そうかもしれない。でも2003年の結果を見れば、それだけではないことが分かるだろう。これはフットボールの素晴らしい点でもあると思うけれど、予算の少ないチームが潤沢な資金を持つビッグクラブを倒す可能性だってある。もちろん、一般的には数多く戦えば、より強力なチームが勝つチャンスの方が高い。でもクラブW杯の決勝は1回限りだ。何が起こるかは誰にも分からない。
 ただ明らかなのは、ミランはチームコンディションがよく、昨シーズンのCLを制して自信を取り戻したということだ。それに、おれたちはもう長い間、監督のカルロ・アンチェロッティの下でプレーしているから、みんなお互いのことをよく分かっている。

――ボカについて、一番脅威に思っているのは?

 そうだな、真のクラックであるリケルメが12月にボカの一員として戦うかどうかだ。彼がいないのであれば、おれたちが有利だと思う。とはいえ、アルゼンチンのクラブは常に多くのタレントを擁しているし、何と言っても彼らはコパ・リベルタドーレスで優勝したチームだ。ミランが目的を達成するためには、チームとしてまとまることが必要だと思う。

――ボカは世界で最も国際タイトルを獲得しているチームだけれど

 そういう意味でも、モチベーションは高まるだろう。おれはミランのユニホームを着続けることに誇りを持っているし、あとは自分たちの力を信じるだけだ。

<了>

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして、マドリーの日刊紙『エル・ムンド』やバルセロナのサッカー週刊誌『ドン・バロン』、『FIFAマガジン』、日本の『Number』や『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿している。携帯版スポーツナビでも連載中




チェコ代表ホルヴァト、ナチ式敬礼で処分

 現地時間6日、スパルタ・プラハチェコ)のMFパベル・ホルヴァトが国内リーグの試合でナチ式敬礼のポーズをとったとして罰金を課されたことが分かった。ロイター通信が伝えている。

 問題の出来事は同じ街のライバルクラブであるヴィクトリア・ツィツコフとの試合終了時に起きた。ホルヴァトはスパルタファンに対して右手を挙げてナチ式の敬礼を思わせるジェスチャーをとったという。規律委員会はチェコサッカー界の名誉を傷付けたとして、同選手に日本円にして100万円相当の罰金処分を課したと発表している。

 ホルヴァトは謝罪した上で、手を挙げたのは敬礼のジェスチャーではなく熱狂的なファンを落ち着かせるためであったと釈明している。

2007年9月7日 16時28分 ISM


スパルタプラハサポーター

やはりちょっと(かなり)怖いです。