原因の徹底究明を求めます

暴動セリエA 今季打ち切りも

サポーターが投げ込む発煙筒で白く煙ったスタンド
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 2日にイタリア・シチリア島カターニアで行われたセリエAカターニアパレルモ戦で発生した暴動の影響で、リーグ戦が今季途中で打ち切られる可能性が出てきた。カターニアのFW森本貴幸(18)もベンチ入りしていた試合でサポーターが暴動を起こし、警察官1人が死亡する大惨事に発展。イタリアサッカー協会は3、4日の公式戦やイタリア代表の親善試合中止を決定し、公式戦の無期限停止を示唆。最悪の場合、シーズンが打ち切られる激震に見舞われそうだ。

 赤く燃えるスタジアムに白煙が充満した。マフィアの起源として知られるシチリア島に本拠を置く両チームが対決する「シチリア・ダービー」は、サポーターの激しい対立で知られる。発炎筒が飛び交う騒動を鎮圧しようと、警官隊が催涙弾を使用したところまでは見慣れた光景だった。プレー続行が不可能となり、試合は後半13分から34分間にわたって中断。ベンチにいた森本も口元を押さえながらロッカーへ一時避難した。再開後も出場機会がないまま1―2で試合は終了。しかし、本当の悲劇は競技場の外で起こっていた。

 亡くなったのは警備にあたっていた38歳のラチーティ警部。乗っていたワゴン車に「カルタ・ボンバ」と呼ばれる紙製の爆発物が投げ込まれ、顔面付近で爆発。ほぼ即死だった。アウエーのパレルモサポーターが乗ったバスの到着が遅れ、入場しようとしたところでカターニアサポーターと衝突したことが発端。後半開始直後から、競技場内外で警官隊との衝突が始まった。地元紙によるとカターニアサポーター19人が逮捕され、警察官を中心に約150人の負傷者が出る惨事となった。

 イタリア協会のパンカリ特別代表は「われわれはすべての活動を停止する。これはスポーツではない。抜本的な対策なしに再出発できない」と発表。週末に予定していたリーグ戦や、7日の親善試合イタリア―ルーマニア戦など試合の中止を決めた。

 暴力事件によるセリエA中止は、サポーターの刺殺事件が起きた95年2月以来2度目だが、同代表は「1節の中止では不十分」と主張。さらにクロアチアハンガリー連合などと競合している12年欧州選手権の開催も「候補から外されても仕方ない」と漏らした。選手協会のカンパナ会長も「反省を促す意味で1年間活動を停止すべき」と話すなど、サッカー界トップの反応は強硬だった。

 イタリアでは、1月27日にも地域リーグでクラブ幹部が暴行を受けて死亡した。この試合は被害者に対する黙とうで始まったが、試合後には被害者がさらに1人増えた。5日にはプローディ首相らが協会と話し合い、統括団体のイタリア五輪委員会も臨時会議を開くという。「わが国のスポーツを失墜させないため明確なメッセージが必要」とプローディ首相。W杯ドイツ大会優勝から7カ月。世界王者が、自ら存在価値を問い直す異常事態に追い込まれた。
[ 2007年02月04日付 紙面記事 ]