オシム監督 Jの全面支援取りつけた

強化担当者会議に出席したオシム監督


 日本代表のイビチャ・オシム監督(65)がJリーグからの全面協力を勝ち取った。24日、東京・本郷のJFAハウスでJクラブ強化担当者会議が行われ、日本協会からの要請を受けてオシム監督が初めて出席。約10分間の“演説”で日本代表への協力と対話路線を呼びかけ、各クラブからの支援を取りつけた。中東遠征(3日アジア杯最終予選サウジアラビア戦、6日同イエメン戦)の出発直前のメンバー決定も承認された。

 熱弁だった。午後2時に会場入りしたオシム監督は得意の“語録”で日本協会とJリーグの協力関係構築の重要性を訴えた。

 「どの国でも協会とクラブは対立するものである。だが、日本が発展するためには、うまくやらないといけない。お互いに同じ皿の上のメシを食っている関係。どちらかが引っ張り合ったらうまくいかない。どちらかがツバを吐きかけてしまったら、それを自分で食うことになるんだ」

 わずか10分間ではあったが、思いは十分に伝わった。千田通訳は「(皿の話は)向こう(ボスニア)にあるたとえ話で、共存共栄を意味する」と説明した。指揮官は最後に質問と意見を求めたが、手を挙げる強化担当者は1人もいなかった。「何もなければ、もう帰りますよ」と笑みを向けると自然と拍手が起こったという。J1、J2全31チームの心をガッチリとつかんだ瞬間だった。

 オシム監督は中東遠征出発(31日)直前の30日にメンバーを決定する予定だが、それについてのクレームも一切なし。新潟合宿で移動初日に猛練習を課したことに対する不満の声もなかった。イエメン戦で代表7人を送った浦和の中村GMが「こういう雰囲気は初めて」と満足そうに話すと、大宮の佐久間強化部長も「協力しようという強い気持ちになった」と心を動かされたようだった。

 オシム監督に共鳴するのは、何もこの日の言葉だけではない。ジーコ体制の強化担当者会議では紛糾することもあった。代表のメンバー発表ではクラブへの事前通達がなく、代表監督との直接対話は少なかった。ジーコ前監督が同会議に出席したのも就任当初の1回だけ。しかしオシム監督はジーコ前監督とは対照的に対話路線を強調。事前通知はもちろんのこと、小野技術委員長を通じてクラブの協力に感謝の言葉も伝えているという。ある関係者は「オシムさん、小野さんはクラブにいた人だから、きめの細かいフォローがある」と話す。

 クラブの強化担当者会議は日本協会・技術委員会の主催で月1回開催されるが、今後も要請があれば、オシム監督はなるべく出席する意向だという。報道陣には無言のまま車に乗り込んだ指揮官だが、表情は柔和だった。日本強化のためのハードルを、また1つ乗り越えた。

 ≪マンガにも登場≫サッカー日本代表オシム監督がマンガになった。25日発売の「Sportiva10月号」(集英社)で「オシムの言葉 マンガ編」の連載が始まった。30万部を超えるベストセラーとなった「オシムの言葉」の著者・木村元彦氏が監修を務めている。Sportivaの松沢編集長は「彼の現在までの軌跡と最新の情報をわかりやすく伝え、読者に感動を与える手段として漫画を選んだ」と話した。
[ 2006年08月25日付 紙面記事 ]



☆まさにマジック!オシム監督が得意の“語録”でJリーグ制圧
2006年8月25日(金) 8時2分 サンケイスポーツ


 これもオシム・マジック?! 日本代表イビチャ・オシム監督(65)が24日、東京・文京区のJFAハウスで行われたJリーグ強化担当者会議を制圧した。オシム流の選手招集方法などをめぐりJクラブ側の反発が必至とみられたが、あの“オシム語録”で機先を制して会議を完全掌握した格好。同監督が見事な人心掌握術で、対立しがちなクラブとの関係で主導権を握った。

 “哲学者”の異名に恥じぬ第一声だった。オシム監督は“難敵”の心をあっさりつかんだ。

 「こういう言い回しがある。同じ皿の上で同じ料理を食べている。どちらかがつばを吐けば、それを自分が食べることになる」

 午後2時開始のJ強化担当者会議で切り出した言葉がこれ。「経験上リーグと協会は対立するものである」という同監督は日本サッカーを「同じ皿の料理」にたとえ、共存共栄の重要性を訴えたのだ。

 紛糾は確実とみられた会議だった。日本サッカー協会技術委員会がJ各クラブの強化担当者に代表日程などの説明を行う同会議は、今回がオシム監督就任後初の実施。中東遠征メンバーを出発前日の30日に決定する異例の方針を示していたオシム監督に対し、不満が続出すると思われた。

 ところが、会議を終えた浦和・中村GMは「あれが例の語録か」と感心しながら「会議に出てくれること自体うれしい。望んでいたこと。これまで協力しなかったわけじゃないが、協力しようという気持ちになる」と共存意識を強調。FC東京・鈴木強化部長も「こういう会議に監督が出るのは珍しい。ジーコのときはなかったよね」などと好意を示した。30日のメンバー決定も多くが異論なし。“強行”に問題はなくなった。

 まさにオシム・マジックだった。同会議にはジーコ前監督も任期4年間で1度だけ出席したことがあるが、各クラブ幹部は印象が薄いと口をそろえる。しかし、オシム監督は車を飛ばして就任後第1回から出席し、開始12分で退席する際には満場の拍手を受ける存在感を放った。日本協会・小野技術委員長は「今の雰囲気を大事にしたい。ホッとしました」と笑顔を見せた。

 ベストセラー本『オシムの言葉』は会社経営者の間でも話題になっている。たった12分で“お偉いさんたち”を虜にした人心掌握術。“オシム語録”が“日本を1つ”に変えていく。

 〔写真:オシム監督(左)がJ強化担当者会議を制圧。決め手はやっぱり“オシム語録”でした。右は大熊コーチ〕

[ 8月25日 8時2分 更新 ]